インターネットを介したマーケティングの重要性が高まるにつれ、Web担当者の重要性も年々上昇しています。しかしいわゆる「ネットに詳しくない企業」の場合、「Web担当者とは」という認識が統一されておらず、Web担当者と上司の間で齟齬が生じたり、思わぬトラブルとなるケースもあるようです。
そもそもWeb担当者とはどのような仕事を担当し、どんな役割を果たす人なのでしょうか。ここでは意外と知らないWeb担当者の役割や担当すべき職務の幅について、初心者にもわかりやすく説明をしていきます。
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Web担当者=ホームページ制作者ではない?
2000年頃から現在までの約20年間で、企業とインターネットとの関わり方は驚くべき進化をしました。その中で「Web担当者」の役割や責任も大きな変遷を遂げています。年代毎のインターネットの変遷とWeb担当者の役割の動き方を見ていきましょう。
2000年代前半のWeb担当者の業務内容
90年代後半~2000年代前半は、日本でのネット文化が定着し始めた頃です。PCでのネット利用をする人は増えてはいましたが、現在のように「誰もがネットユーザー」という時代ではありませんでした。
無料ホームページ(Yahoo!ジオシティーズ等)
2ちゃんねる 等
企業ではまだWeb経由でのマーケティングに本腰を入れていないところも多く、「役割はよくわからないが、とりあえず公式ホームページを置いておく」というケースも多々見られました。
個人で趣味のホームページを制作した経験がある社内担当者等が、適当にホームページを制作したり更新したりしていた…という企業も珍しくなかった時期です。
企業ホームページ(公式サイト)の制作
企業ホームページ(公式サイト)の更新
2000年代後半のWeb担当者の業務内容
2000年代も後半に入ると、[Web2.0]の時流に乗ってより「手軽に使用できるサービスが増えていきます。PCでのネットユーザー率が増加したほか、携帯電話(今で言うガラケー)を経由したモバイルネットサービスの利用者も増えました。
ブログ等の閲覧者の増加から、ネット広告への出稿をする企業数も上昇。またamazonや楽天市場といったECサイトのユーザーも増加していきます。「ネット経由で物が売れる・お金が動く」という意識を各企業が強く意識するようになった時代と言えるでしょう。
無料ブログサービス(livedoor、Seesaa等)
mixi
ニコニコ動画
amazon
企業では公式サイトのマーケティング効果が認められるようになり、よりクオリティの高いサイトが求められることに。大手企業ならず中堅企業でもサイト制作は外注することが一般的になっていきます。
また小規模店舗の中でも公式ブログを開設したり、メルマガ発信で顧客を掴む店舗が見られるようになりました。
企業ホームページの外注マネジメントまたは制作
公式ブログの更新
メールマガジンの配信 等
2010年代前半のWeb担当者の業務内容
2010年代に入るとiPhone等のスマホが席巻。TwitterやFacebook等のSNSユーザー数が一挙に増加し、誰もが日常的にネットに触れるようになります。その流れに乗って、大手企業各社もSNS公式アカウントを取得。「SHARP」「タニタ」等をはじめとした人気アカウントが話題となる等、「SNSが売上アップに繋がる」ということを各企業が知る流れとなりました。
またネット広告のいわゆる「アフィリエイト広告」に積極的に乗り出し売上を伸ばす企業も多数見られるようになっていきます。
この他「食べログ」「アットコスメ」等の口コミサイトや、「クックパッド」等の投稿型レシピサイトも人気に。これらユーザー主体のサイトに企業が「プレゼント企画」「サンプル進呈企画」等で参入し、コラボレーションすることで売上を伸ばす事例も増えていきました。
食べログ
アットコスメ
クックパッド
企業ホームページのディレクション・更新
公式ブログの更新
メルマガの配信
Twitter、Facebookによる情報発信
ユーザー主体サイトへの広告出稿 等
2010年代後半以降のWeb担当者の業務内容
2010年代後半に入ると、SNSも多様化。より密なコミュニケーションが取れるだけでなくクーポンの配信ができる『LINE』が一躍人気となります。また写真によるイメージ作りを重視した『Instagram』も若年層を中心に人気を博し、企業各社もこれらのSNSアカウントによるマーケティングに力を入れるようになりました。
またスマホユーザーが70%という驚異的な増加を見せ、さらに出先でも4G高速通信が可能となったことから、『You Tube』『tiktok』等の動画サイトの再生数も上昇。各企業がYou Tubeに公式チャンネルを設け、製品・サービスに関連する役立つ情報を配信するようになっています。
また企業公式サイトでは、企業がより特色をもたせたコンテンツマーケティングを展開するように。一見すると雑誌のようなECサイト『北欧、暮らしの道具店』や、情報提供サイト『石鹸百科』と連動したECサイト『石けん百貨』のように、コンテンツの切り口や情報量等で売上を直接的に伸ばすサイトが多数登場するようになりました。
LINE
tiktok
You Tube
スマホアプリ
企業ホームページのコンテンツディレクション
Twitter・Facebook・LINE・Instagram等の各SNSの情報発信
You Tube等の動画制作ディレクション
アプリ展開
ネット広告各種への出稿管理 等
たった20年という時間の流れの中で、「Web担当者がやるべきこと」はまったく違ったものになったとすら言えるでしょう。趣味的なホームページ制作から、より多彩な媒体を扱うマーケティング担当へと変貌したと言っても構いません。
もちろん現在でも、「Web担当者」=「Web制作および企画更新担当」と捉えている企業もあります。しかし広義的には、今やWeb担当者はWebマーケティング全般の管理者という扱いです。
つまりBtoB、BtoCに関わらず、インターネットを通じて売上・集客アップに繋げることを黙目標とした業務全般を企画・設計・遂行するということがWeb担当者の仕事となったのです。
Web担当者の役割と仕事内容とは
では実際にWeb担当者はどのような業務を遂行していくのでしょうか?ここでは小規模企業のWeb担当者の一例を見てみましょう。
Webサイト・Webマーケティングの現状把握
何よりも重要なのは、「現行で何が不足しており、何が課題なのか」を知ることです。
総PV数、総UU数の推移
アクセス解析からの直帰率や平均閲覧PV数等の確認
コンバージョン数の推移 等
上記のようなデータを見ながら、サイトコンテンツの企画やマーケティングの方向性等、そしてSEO対策(検索エンジン最適化)等に役立てていきます。
サイトへのアクセス解析は無料サービスである程度チェックすることも可能です。しかし「その他の業務も平行しつつ解析もするのは難しい」「データはあるが改善にうまく役立てられない」という場合、業者にサイトコンサルティングを依頼するケースも多いです。
Webサイトのディレクション
企業公式サイト制作を自社内で行うという企業は現状ほぼ無いと言っても良いでしょう。見た目の問題だけでなく、サイトの動線や表示速度・モバイル対応といった細かな問題がマーケティングの結果に直結します。
日々アップデートされるサイト制作の専門知識を他業務と並行して学び、プロフェッショナルに負けないサイトを作るというのは一社員には至難の業です。現在ではサイト制作の外注費用が低価格化していることもあり、ほとんどの企業はサイト制作自体は業者に外注しています。
そのためWeb担当者が行うのは「デザインの方向性」「設置していきたいコンテンツ」「使用する素材選び」等、制作におけるディレクション業務となります。
とは言えひとりよがりで裁量するのはNG。販売担当・広告担当等と協議しつつ、また外注業者にも相談しながら、最適なサイト方向性を打ち出していきます。
Webサイト更新作業
「Web担当はサイトに一切触れないのか?」というと、そういうわけではありません。企業サイトの場合、業者発注時にWordPress等のCMS(コンテンツ管理システム)を置いておくことが多いです。
CMSがあれば、サイト制作の専門知識が無くてもある程度の更新作業が行なえます。例えばブログ形式の記事を投稿したり、お知らせを更新するといった具合です。
企業公式ホームページは、社の公式情報をいち早く顧客にお知らせする場でなくてはなりません。Web担当者は各部門と連携し、自社のニュースをスピーディーに訪問者達に届けます。
メールマガジン執筆ディレクション・配信
メールマガジンは顧客と定期的に接触できる場です。製品・サービスの刊行ペースに合わせ、週に1回程度から月1回程度のペースでの定期配信の他、セールやイベント・フェア等のお知らせ等を行います。
近年ではメルマガ内容の執筆をライターに外注する企業も珍しくなくなっていますが、Web担当が執筆を行うケースも見られます。いずれの場合でも、各部と協議の上での内容のディレクションや最終的な原稿確認等はWeb担当が行います。
SNS等のソーシャルメディア対応
Twitter、Facebook、Instagram、LINE等の各SNSやその他ソーシャルメディアでの情報発信、またはその統括を行います。SNSによっては、一日一回から一日数回といったハイペースな発信が望まれるケースも。そのためSNSによって担当者を分けている社も見られます。
ちなみに「TwitterとFacebookでまったく同じ内容を投稿していく」といった方法では、あまり宣伝効果は得られません。各ソーシャルメディアの特性を調べ、ユーザーのニーズに合った情報発信を行いましょう。
またメディアによって顧客とのコミュニケーションにブレがないかを確認していくことも重要となります。TwitterやLINEは顧客との直接接触をする場でもあり、カスタマーサービス的な意味合いも持ちます。
カスタマーサポート担当との協議も行い、クレーム等の対応・切り分け等を決めておくことも大切です。
ネット広告への出稿管理
リスティング広告やソーシャルメディア広告、アフィリエイト広告等の各広告への出稿作業(広告バナー素材の提供当)や、広告出稿後のクリック数・コンバージョン数等の管理、それの解析によるさらなる広告の改善等を行います。
各広告の誘導先は自社ホームページ(ランディングページ等)となることが多いです。しかし例えば広告クリック数が多いのにコンバージョン数が低い場合、サイト内容の改善が必要となるケースもあります。
アフィリエイト広告の場合、広告媒介をするASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)によっては広告内容やランディングページ制作についてコンサルティングしてくれることも。しかし純広告の場合等には、別途広告代行業者等にWeb広告コンサルタントを依頼しているケースも多いです。
各部署との連携・すり合わせ
上記の様々な業務内容でわかるとおり、Web担当はマーケティングに関わる様々な部署とのやりとりが必要となります。
オフラインの広告担当との連携
営業と連携
コールセンター(窓口担当)と連携
制作部との連携
各部門のデータ統合 等
営業部、販売担当等の「顧客と直接接する人たち」の意見から、思いもよらないサイト改善のアイデアが生まれることもしばしばです。また製品ページのアクセス解析等から、制作部門に意見できることもあるでしょう。
2000年代当初の「Web担当者」に比べて、2020年代のWeb担当者にはより高い各部門とのコミュニケーション能力が求められます。
おわりに
Web担当者の役割の移り変わりを見たことで「Webマーケティングで勝つ上で、やることがこんなにあるのか!」と驚かれた人も居るかもしれませんね。
大手企業に大規模なWebマーケティング担当部署があり、しかもそれが現在では花形部署であるということも、現在のWebマーケティングの重要性を見ればおわかりいただけることでしょう。
かつては「専門的技術者」的な扱いだったWeb担当者ですが、現在では「Webマーケティングを統括できる能力がある人」が必要とされています。その分、例えばホームページそのものを作るコーディング、広告媒体選びといった専門知識が必要となる部分は「専門家に任せる」という意味で外注をするケースが一般的となりつつあります。
特にWeb担当専門の業務担当者を置けず、他業務と平行しつつWeb関連業務も行ってほしい…といった場合には、専門家に任せられる部分は任せ、各部署や外部業者との連携業務に力を入れられるようにすることが理想的と言えるのではないでしょうか。
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