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「モノ販売」から「物語を売る」へ - 宣伝実例と売上UPのコツ

良いものを売っている筈なのに結果が出ない…その理由はもしかしたら、製品やサービスの内容ではなく「売り方」のせいかもしれません。あなたのマーケティング、まだ「モノそのものを売る」ことに拘りすぎていませんか?

情報が氾濫する現在、売れるWEBマーケティングの方向性は「モノそのものを売る」から「物語を売る」「感動を売る」「体験を売る」へと変化しつつあります。「物語(ストーリー)を売る」という手法を身に着けて、売上アップへと繋げていきましょう。

ここではストーリーブランディング・ストーリーマーケティングの例や、売上アップのコツを解説していきます。

「物語を売る」とは何か?

「物語を売る」とは何かを理解するには、まず従来のマーケティング方法を理解しなくてはなりません。日本におけるマーケティングの変遷を見ていきましょう。

モノを売る:スタンダードな宣伝方式

「モノ・サービスそのものを売る方式」とは、古来より行われきた基本的なマーケティングの方式です。「販売するモノそのもの」の良さ(メリット)をアピールし、顧客に選んでもらうという手法を取ります。

特徴
製品の特徴を強調する
製品の「強み」をアピールする
製品の「他社との違い」をアピールする
例:野菜ジュースの場合
リコピンを従来比120%摂れる
小さなお子様でも飲みやすい
1日分の必要なビタミンCの1/2を補給 等

ちなみにこのマーケティング方式が「古くてもう使われていない」ということはありません。現在でも使いようによっては有効です。しかしこの「モノを売る方式」だけでは限界があります。

長所
  • 比較的カンタンに行える
  • シンプルな宣伝ができる

極端な話、モノを売る宣伝方式は「強み」をリストアップするだけで始めることができます。

欠点
  • 競合製品より明瞭に優れた性能が必要
  • 大幅な安値等、消費者にとっての「コスパの良さ」が求められる

ざっくり言うと「とても良いものを作る」か「安くする」しか競合より目立つ方法が無いわけです。これでは企業にとっての利益が出にくいですよね。そのため、各社はより新しい宣伝方式を探すようになりました。

ライフスタイルを売る:1990年代頃~

高度経済成長期からバブル期を迎え、より多様な製品が販売されるようになる中、各企業は「消費者の新たな需要を生み出す」ことを重視するようになります。80年代頃から始まったこの「ライフスタイルを売る」というマーケティングは、90年代にはすっかり定着するようになりました。

特徴
新しい生活様式や信条の提案
「顧客の成長や変化」を後押し
統一化されたブランドイメージ
例:野菜ジュースの場合
朝ジョギング後、1杯の野菜ジュースが私を変える。
(→ 運動習慣+健康嗜好の提案)
飲み会の後にこれ一本、翌朝の目覚めが違う。
(→ 忙しくても健康さを忘れないビジネススタイルの提案)
無農薬だから体に安全、安心。
(→ 無農薬、有機農法、無添加等による健康志向の提案)

「健康的かつ現代的に暮らしたい」「忙しくても自分らしく過ごしたい」といった”新しいライフスタイル”を提案し、その素敵な生活をするには製品やサービスが欠かせない…とアピールすることで、結果的に製品を売ることに成功したわけです。

ライフスタイルを売る実例としては、「シンプルかつ流行に流されない」というライフスタイルを提案した『無印良品』の大成功等が挙げられます。現在でもこのマーケティング方法を取り入れている企業は多いです。

長所
  • 新しい需要を生み出せる

例えば今まで野菜ジュースに興味がなかった人でも、スタイリッシュなCMを見て「新学期からはジョギングを始めて、その後に野菜ジュースを飲む美容ダイエットを始めようか」と考えたりするもの。ライフスタイルの提案で、新規顧客を大量に掴む可能性もあります。

欠点
  • 大企業が有利になりやすい

ライフスタイルを提案するマーケティングの場合、宣伝イメージの見栄えの良さ(視覚効果)が大きな影響を持ちがちです。そのため画像・映像に資金を投入できる大企業の方がマーケティングを成功させやすい傾向も見られます。

物語を売る:2010年頃~

2000年~2010年にかけてはインターネットが定着し、消費者はより多種多様な製品・サービスの中から欲しい物を選べるようになりました。企業側としては競合が林立し、従来の「モノを売る」マーケティングだけでは厳しいだけでなく、「ライフスタイルを売る」方式だけでも中小企業は目立てないようになってきました。

そんな中、注目を浴びるようになったのが「物語を売る」「感動を売る」というマーケティングの方式です。

特徴
商品に情緒性(感情)を付加させる
顧客を造り手側(企業側)の”ファン”にさせる
顧客は製品・サービスを使うと「自己表現できた」と価値を感じる
顧客を「製品を愛する一員である」と感じさせる
例:野菜ジュースの場合
「野菜の廃棄率を減らしたい」という思いから生まれた野菜ジュース。それでも賛同する人からのクラウドファンディングで製品販売を開始。月によって使用される素材が一定しないというデメリットも。宣伝はHPとSNSのみ。生産者から直接、消費者に月1でのお届け。

どうでしょう、従来の「野菜ジュースの売り方」とは大きく傾向が違うと思いませんか?顧客はこの製品を買う時に「野菜ジュースそのもの(味、価格と見合うコストパフォーマンスの良さ等)」を検討していません。

「野菜ジュースにまつわる物語」に共感・感動し、それを購入、さらにはSNS等で購入や感想を書くことで「物語の一員」となれる--顧客は野菜ジュースを取り巻く「情報」にお金を払おうとしているのです。

長所
  • 中小企業でも導入しやすい
  • デメリットも「強み」にできる
  • リピーターを獲得しやすい

上の「野菜ジュース」の例の場合、「味が一定しない」といったデメリットすらも、「物語」に感動・共感した顧客には一種の「魅力」となり得ます。

欠点
  • 宣伝にコツが必要
  • 継続したマーケティングが必要

「物語を売る」という方式は感情に訴えかける方式であり、顧客の心理側面をよく理解する必要があります。また「一発屋方式」というよりも、公式サイトやブログ、SNS、動画配信等を使用し、定期的かつ継続的なマーケティングを行なった方が有効な方式です。

物語・共感・感動を売る
ストーリーブランディングの例

「物語を売る」というマーケティング方式について、「まだちょっとピンと来ない」という人も居るのではないでしょうか。ストーリーブランディングに成功した例をいくつかピックアップしてみます。

テーマパークのマーケティング

ストーリーブランディング・ストーリーマーケティングの元祖とも言えるのが、テーマパーク「東京ディズニーランド」「東京ディズニシー」です。

これらのテーマパークでは、園の中に一歩入った瞬間から「別世界」へと顧客が踏み込めるように徹底した設計が行われています。例えば現実世界を想起させる看板等は一切ありません。また従業員は「キャスト(演者)」と呼ばれ、まるでディズニーという物語の中の登場人物であるようににこやかに振る舞います。

園の中で遊ぶうちに、顧客はディズニーの提案する美しく明るい物語の中で感動し、共感する「一人の登場人物」となっているわけです。単純に「乗り物に乗って遊ぶだけの遊園地」とは、マーケティングの在り方がまったく違うわけですね。

「物語の共有」という方式を採用したことによって、ディズニーリゾートは「リピート率95%以上」という驚異的な数字を叩き出しています。

アイドルCD販売のマーケティング

次に考えるストーリーマーケティングのお手本が「AKB48」です。「会いに行けるアイドル」として秋葉原からスタートしたアイドルグループであることは、ご存知の人がほとんどであることでしょう。

AKB48のマーケティングでは、徹底した「成長方式」が取られました。最初は踊りがうまく踊れない、うまく笑ったり話したりできない--そんな「未熟」な少女たちが努力し成長する姿を動画やTV番組の中で見せることで、顧客達はメンバーたちを「応援したい」と考えるようになります。

さらにAKBのCDの販売方式は画期的でした。CDを「投票券」とすることで、グループの中の「推し(応援するメンバー)」を活躍させることができるーー「身近なアイドル」としてスタートした少女をトップアイドルに押し上げる、という「物語」に強く共感し感動したファン達は、何枚ものCDを買うようになったわけです。

ネット普及によりCDを購買する層が減る中、AKB48は2013年のシングル『さよならクロール』で195万枚以上という驚異的な売上を叩き出しています。

パン販売のマーケティング

上記2つの例は大手のマーケティングですが、今度はグッと小規模な販売例です。北海道胆振総合振興局東部、勇払郡のむかわ町にあるパン屋「むかわ夢風船」では、2016年11月、お祭りに合わせて大量のパンを制作していました。

ところがその日、突然の高速道路の通行止めにより、来客予定が大幅に減ってしまうことに。大量のパンを廃棄することになってしまう…そこで店舗側が考えたのが、Twitterでの呼びかけでした。「パンが山程余っています!助けて!」というヘルプコールは、瞬く間に拡散されることに。近隣住民が車で訪れて購買した結果、その日のパンをすべて売り上げることができました。

さらに購買した新規顧客がSNSでそのパンの味・美味しさを発言したことで、パン販売店そのものの大幅な認知度アップにも繋がったのです。「小さなパン屋さんの不幸なアクシデントを救いたい」という『物語』に、多くのユーザーが共感したわけですね。


 

「物語を売る」で売上アップする4つのコツ

「物語を売る」というマーケティング方式の斬新さや影響力の強さは伝わったでしょうか。「物語を売る方式」は、公式サイト上ではもちろん、TwitterやInstagram等のSNSマーケティング、YouTube等を使った動画マーケティングにも応用することができます。

ただし「とにかく物語を作れば良い」というものではありません。「物語を売る方式」で売上アップをするには、次のようなポイントに気をつけましょう。

1.製品・社風と「物語」は調和しているか?

まずは製品の強みや社風の特徴、他社との違いをリストアップしてみましょう。提案しようとしている「物語」と、製品・サービス・社風等は調和しているでしょうか?

唐突な物語では、顧客の共感を得ることはできません。必ず「製品・サービス・企業」の特徴とうまく物語が合致するようにしましょう。ちなみに「特徴」は、必ずしも良い点(メリット)ばかりとは限りません。例えば「開業50年、あまり手入れをしていない旅館」でも、「昭和レトロで面白い」と興味を持たれる可能性もあるわけです。

2.「志」はわかりやすいか?

物語を売るマーケティングでは、企業側が何らかの志(こころざし)を持って行動し、そこに顧客が共感・応援するスタイルとなるのが一般的です。例えば上のAKBの例で言えば、志は「身近なアイドルからトップアイドルに上り詰めたい!」といったところですね。

」は物語のテーマとも言いかえられますが、あまり捏ね繰り回したものでは無い方が良いです。テーマが複雑化するほど顧客が理解するのに時間がかかり、宣伝力が落ちてしまいます。

志・物語のテーマの例
野菜の廃棄率を下げたい!
女性にも着やすい作業着を売りたい!
潰れそうな旅館を3代目がなんとか立て直したい!

「昔話」や「英雄譚」のような、ややベタとも言える筋のわかりやすさを意識した方が、顧客の感動は生みやすいです。顧客がパッと見た時に「応援したい」と思える、シンプルかつわかりやすいストーリーラインを作っていきましょう。

3.ターゲット層を明確にしているか?

どのような「物語」に心を惹かれるかは、顧客の性別や年代等によっても変わります。例えば50代男性でしたら「日々に疲れた同年代の男性がもう一度奮起する物語」に共感することでしょう。反対に30代のママであれば、子育て中の不満などに「そうそう!」と共感しそうですよね。

「売れる物語」を作るには、まずターゲット層を絞り込むことが大切です。

「売れるなら誰でも良い」ではなく「この製品・サービスを誰に売りたいのか」を明確にしましょう。性別や年代等はもちろん、年収、ライフスタイル、嗜好等も絞り込んで対象を狭めていくと、よりマーケティングの効果を上げることができます。

「100人居たら100人全員にウケる」ではなく「100人のうち10人が強く惹きつけられ、熱心なリピーターとなってくれるマーケティング」を目指すのが、中小企業の宣伝のコツなのです。

おわりに

「物語を売る」というスタイルのマーケティング方法について解説しましたが、情報はお役に立ちそうでしょうか。「物語を売る・共感を売る」というマーケティングでは、上でも解説したとおり、「志(テーマ)」が重要になります。

一本筋の通った「テーマ」をもたせることで、WEBサイトやSNS・動画等のマーケティングの展開を拡げて行く時にもブレることがなくなるのです。まずはじっくり製品の強みや社風の特徴等をリストアップし、物語を作り込んでいきましょう。

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